「つるのおんがえし」の別名

いま、息子のなかで熱いのは「つるのおんがえし」である。

「ももたろう」や「さるかに合戦」も読んであげるのだが、断然「つるのおんがえし」がお気に入りのようだ。前ふたつは意外とストーリーが複雑だし、キャラクターも多くて、二歳児にはまだ把握しきれないのかもしれない。

で、絵本を読んできて、息子は言う。

「はね、よんで」

たしかに、つるが自分の羽根をひとつひとつ反物に織り込んでいたという、あのシーンはショッキングだ。きみのボキャブラリーに「つる」はないけれど「はね」はあるもんね。

という感じで、通称「はね」だった「つるのおんがえし」であるが、また呼び名が変わった。

にこにこしながら、絵本を持って、息子は言う。

「みちゃった! よんで」

うん、見ちゃうもんね。
思いきり、ネタバレのタイトルだ……。

絵本、大好き

子供を本好きにする方法として、よく言われるのは「まず親が本を読むこと」である。

トトくんの場合

・親がつねに本を読んでいる姿を見ている。
・まわりに本がたくさんある。
・テレビやゲームなどの刺激的な娯楽が家にない。

これで読書の習慣がつかないわけがないと思うのだが。
いまのところ、息子は絵本が大好きで、すきあらば「読んで」とねだりにくる。

しかし、自分自身の子供時代はどうであったかと振り返ってみると、

・親が本を読んでいる姿など見たことがない。
・家には、ろくな本がなかった。
・つねにテレビがつけっぱなしで、親のほうが子供よりも長時間TVゲームをしていた。

という状況だった。

にも関わらず、なぜか、自分は読書の魅力にはまり、ひまさえあれば本を読んでいるような子供になったので、家庭の環境だけが要因ではないだろう。

現在、少しだけ懸念しているのは、母である私があまりにも本が好きで、本に意識を向けているせいで、息子はかえって本を憎むようになってしまわないだろうか……ということである。
「いつもいつも、本、本、本ばっかり読んで! かあちゃんは、ぼくよりも本が大事なんだ!」とか思われないようにしないと。

プロフィール

藤野恵美(ふじのめぐみ)

児童文学やミステリや恋愛小説など色々と書いている小説家。
大阪府箕面市在住。一児の母。
大阪芸術大学卒業。大学時代はSF研究会に所属。

藤野恵美がどんなひとかを知るには、作品を読んでもらうのがいちばんだと思います。

『ゲームの魔法』(アリス館)という本は、なかなか書店では見かけない幻の作品となっていますが、作者の子供時代がよく反映されています。

おなじくアリス館から出ている『世界で一番のねこ』も、いろんな年齢の方におすすめの作品なのですが、これも書店にあまり置いてないですね……。

あと、青い鳥文庫の七時間目シリーズも、小学生のころに実際にあった話がエピソードとして使われていたりして、作者のひととなりがよく出ている作品だと思います。

大人の方には『ハルさん』(東京創元社)や『わたしの恋人』(講談社)がおすすめです。

【略歴】
2003年、第20回福島正実記念SF童話賞入賞。
2004年、第2回ジュニア冒険小説大賞を受賞した『ねこまた妖怪伝』
を岩崎書店より出版してデビュー。

【執筆以外の仕事】
ステーション文庫新人賞 選考委員
みちと近畿のショートストーリーコンテスト「小学生の部」審査員
堺市立東深井小学校にて講演会
西宮市立鳴尾図書館にて講演会
兵庫県私学会館にて中学高等学校図書館関係者向けの講演会
創作サポートセンター「文章講座」講師
創作サポートセンター「エンターテインメントノベル講座」講師

藤野恵美になにか伝えたい場合には、本にはさんである出版社あてのハガキを使ったり、著作の奥付ちかくにある出版社の住所へ手紙を送ってもらえると、少し時間はかかりますが、ちゃんと届きます。