父親好き好き大作戦

父親をこわがるようになった息子。
ちまたでは、父親の権威を利用して、しつけのために「パパに叱ってもらうよ」と脅したりする場合もあるようだが、基本的に私は、恐怖によって従わせる教育は下策で、デメリットのほうが大きいと考えているので、その手はとらない。
父と子の関係修復のため、以下のような作戦に出た。

・父親がいないときにも、その存在をアピール
ダンナは帰ってくるのが遅いので、夕飯は私と息子のふたりで食べることが多い。
そんなときにも、さりげなく、ダンナの話をする。

「このあいだ、ととくんと、かあちゃんと、ダディさんと、三人でおでかけして、楽しかったねえ」
「だでぃさん、どこいった?」
「ダディさんは、いま、会社だよ」
「かいしゃ? なにしてる?」
「会社でお仕事してると思うよ」

「ととくん、それ、もう食べないの?」
「たべない」
「じゃあ、のこりは、ダディさんに食べてもらおっか」
「うん、だでぃさんに、あげる」

こうして、ダンナのテーブルには、食べさしのお菓子や残飯がそなえられることになる。

・母にはできなくても、父ならできることをアピール
牛乳パックで作ったおもちゃが壊れたときなど。
「あー、これ、とれちゃったねえ」
「ぺったん、して」
「かあちゃんにはできないわ。ダディさんなら、きっと、直してくれるよ」

おもちゃの電池が切れたときなど。
「あー、電池、なくなっちゃったねえ」
「あたらしいの、いれて」
「かあちゃんにはできないわ。ダディさんが帰ってきたら、やってもらおうか」

コップを重ねて、はずれなくなったときなど。
「あー、かたい、とれないわ」
「とれない?」
「うん、かあちゃんにはできない。ダディさんだったら、力持ちだからできるかもねえ」

その他、息子が「たかいたかい、して」とか「おすもうしよう!」とか言ったときにも、この手を使う。
別名「面倒くさいことはダンナに丸投げ作戦」である。

こうして、ダンナのテーブルには、壊れたおもちゃなどがそなえられることになる。

・休みの日には、とにかく息子と遊んでもらう
仕事で疲れているようだったので、つい、仏心を出して、ダンナが寝ていると「そっとしておいてあげようね」などと言って、息子とふたりで買い物に行ったりしていたのだが、それが彼らの貴重なコミュニケーションの時間を奪っていたのだ。なので、心を鬼にして、私は息子に言うことにした。
「ダディさん、まだ寝てるね。起こしちゃって」

・「良い警官、悪い警官」もしくは「泣いた赤鬼」作戦
私が息子に厳しくする。
「かあちゃん、こわい……。やさしいがいい……」
「怒ってるときは、優しくできません!」
「いや! こわいのいや!」
そこに、満を持して、ダンナが登場。
「ほら、おいで、ダディがだっこしてあげよう」

これらの策が功を奏して、ふたりの関係は良好なものとなり、もうすっかり息子はダンナにべったりである。

「だでぃさん、きてー」
「いっしょに! だでぃさん、いっしょに!」
「うんこでたよー、だでぃさん、ふいてー」

あまりに息子になつかれて、慕われて、まとわりつかれて、大変なので、ダンナは「こわがられているくらいがよかったよ」とぼやいている。