冬の日のできごと

子供の手は、つめたい。

「ととくんのお手て、つめたいねえ」

そう言いながら、私はひんやりとしたちいさな手を、自分の手で包みこむ。
ちなみに、寒いときに子供の手足がつめたくなるのは、毛細血管を閉じて、体の熱を逃がさないようにする体温調整のためらしい。
そうわかっていても、心配になり、あたためてあげたくなるものである。

ふだんはつめたい子供の手が、あたたかいとき。
それは、眠くなった証拠である。
寝るまえに手足があたたかくなるのは、毛細血管を広げることで、熱を放出して、脳の温度をさげ、クールダウンするためだろう。

たいてい、つめたい息子の手を、私があたためる。
しかし、あるとき、眠くなった息子の手はあたたかく、私の手のほうがつめたいということがあった。

私の手にふれた途端、息子はとてもショックを受け、驚いた表情を浮かべた。
息子は心のなかで「いつもはあたたかいかあちゃんの手が、つめたい! どうしよう! どうしよう!」と考えをめぐらせたのだろう。
私の手をにぎったまま、走り出した。

「おいでー」

連れて行かれたのは、ストーブのまえである。
息子は、私の手をストーブのまえにかざして、あたためたのだ。

これが、この冬いちばんの思い出である。