『10分で読めるすいり・たんていの話』が発売中です

10punアンソロジー『10分で読めるすいり・たんていの話』に「消えた怪獣のなぞ」という作品が収録されています。

以前、学研の「読み物特集号」に掲載された作品の再録となります。
コナン・ドイルやモーリス・ルブランや小酒井不木といった古典的な探偵小説の作家といっしょに自分の作品が載っているのは、不思議な感覚です。

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中尾明氏のこと

中尾明氏が亡くなられたので、偲ぶ会に行って来ました。
氏はジュニア冒険小説大賞の選考委員で、私の作品が受賞したときに、非常に励みになる言葉をくださったのでした。
来年の贈呈式でも、お会いできると思っていたのに……。本当に、いまだ、ショックで、信じられない……。
自分がデビューしたときの選考委員が亡くなるというのは、作家としての親を失ったような気持ちです。

偲ぶ会で、氏の著作物を記念に持ち帰ってもいいと言われ、『奇想天外』を一冊いただき、帰りの新幹線で読む。
掲載されていたのは、奇術師と霊媒〈奇術王フーディーニの挑戦〉というノンフィクションで、読むべきときに読むべきものに巡り合ったというか、シンクロニシティを感じた。

フーディーニは、死んだ母にもう一度会いたいという思いから、心霊術を信仰していたコナン・ドイルと友情を結ぶ。
だが、結局、霊媒のいんちきやトリックを見破っていき、ドイルとも決別して、霊界の存在を信じることができないまま、この世を去っていく……。

「最近のオカルト・ブームには、現代文明の行き詰まりで衰弱した人間のオカルト的能力を回復したいという希求がこめられているのだが、オカルト的なものを何でも無批判に受け入れる態度は危険である。」
「霊媒も、気むずかしい霊魂どもをよく説得し、心霊否定論者でさえ疑いをはさむ余地がなくなるほど明白な心霊現象を確立しなければならない。それまでは、いかさま、ぺてん、と罵倒されてもしかたないのである。」『奇想天外』1974年6月号の中尾明氏の文章より。

お世話になったひとに、恩を返すことはできない。
上の世代から受けた分は、自分がこれから、下の世代に返していく、それが生きるということなのだろう……と痛感して、死を悼むのでした。