王子動物園とバーン・ジョーンズ展

ダンナと息子と連れだって、兵庫県立美術館へ、バーン・ジョーンズ展を観に行って来た。

まず、神戸市立王子動物園に行き、息子をめいっぱい疲れさせる。
「ととくん、らいおん、なでなで、できるで」
自慢げにそう言っていた息子だが、ふれあい動物コーナーのひつじにびびっていたことは内緒だ。

動物園を歩きまわったあと、息子をベビーカーに乗せて、ミュージアムロードを進む。
美術館に到着したころには、息子、ベビーカーにて、お昼寝タイム。

そうして、ゆっくりと、美術鑑賞。

世界三大美書のひとつ『チョーサー著作集』が展示されていて、うっとり。
ウィリアム・モリスやジョン・ラスキンが好きなので、この雰囲気はたまらん。

バーン・ジョーンズは、画題を物語に取ったものが多く、挿絵画家としても才能が素晴らしい。
「果たされた運命:大海蛇を退治するペルセウス」とか見ていると、天野喜孝を思い出す。いや、順序が逆なんだろうけれど。

ラファエル前派って、詩情にあふれるというか、幻想性と装飾性が際だって、やっぱり、好きだなあ。
『ゲームの魔法』の挿絵を描いてくださった羽住都さんとか、お嬢様探偵ありすシリーズのHACCANさんとか、私の好きなイラストレーターさんの画風に通じるものがある。

出口で、次の特別展『フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活』のチラシを見つけ、「あ、これ、見たかったやつだ」と手を伸ばしたところ、ダンナが横にあった次々回の特別展『超・大河原邦男展 レジェンド・オブ・メカデザイン』のチラシを取っていた。
やるな、兵庫県立美術館……。

そんな秋分の日でした。

小松左京ナイト

ダンナと息子は保育園の夏祭りに行き、私はひとり、大阪市立科学館で行われる小松左京ナイトへと向かう。

いまは児童文学を主に書く作家になっているが、実は、大学時代に所属していたサークルは「SF研究会」だったりする。
まあ、私がいた頃には、SF小説を読むというより、映像系のひとが多く、先輩方はゲーダイガーなる戦隊ヒーローをやっていたりする楽しいサークルだったのだが。

小松左京作品には特に思い入れが深いわけではないのだけれども(多才な作家だとは思うが、巨星ゆえに「私の愛する作家」という感じではない)、この年代の作家ならではの生き様には惹かれるものがあり、氏の事務所があったホテルプラザの近くに住んでいたことがあったり、いまは氏の自宅があった箕面在住だったりと、勝手に親近感を抱いて、一周年の追悼イベントに参加してきた。

今回のイベントは、プラネタリウム・ホールが会場になっていて、宇宙SFなイメージにぴったりだった。
ゲストの堀晃氏(SF作家)、福江純氏(天文学者)らの案内で、小松作品に描かれた宇宙が紹介されるのだが、ただの講演会ではなく、ゆったりとしたソファーに背中をあずけ、ドームを見あげると、氏の作品タイトルが天から降ってきたり、『結晶星団』に出てくる恒星の動きが再現されたり、『虚無回廊』の謎めいた巨大な茶筒みたいな天体の見え方を検証してみたりと、プラネタリウムならではの演出が面白い。

そして、リメイク版の『日本沈没』を撮った樋口真嗣監督の手による「小松ロケットが宇宙に飛び立ち星になる追悼映像」が上映されて、小松氏の作中の言葉が朗読されると、ああ、そうだ、これは追悼イベントだったんだ……と思い出して、切なくなる。

しかし、映像が終わると、会場は拍手に包まれ、イベントのチケットは予約分だけで売り切れたらしいことも思い出して(入り口で、創作講座の生徒さんと会って「せっかく来たのに完売してたんですよ」としょんぼり話していた)、作家の死後もこれだけのファンが集まるというのは凄いなあと、あたたかな気持ちがこみあがってくる。

帰り道、人波のなかに「眉村先生を囲む会」でお世話になっている大熊さんのすがたを見つけて、声をかける。
眉村卓先生は、私の大学時代の恩師であり、縁あって、もう何十年も続いている囲む会に、参加させてもらうようになった。

プラネタリウムを出て、星のない梅田の夜空を見あげながら、大熊さんと「平行世界」について話す。
グレッグ・イーガンの『ディアスポラ』と、眉村先生の描く「パラレルにいる自分に対する影響」の解釈のちがいとか。

家に帰り着き、まだ眠っていなかった息子から、夏祭りの話を聞く。
なんだか、とても、遠い場所に行って、帰ってきたような気分になった。

カジヒデキのライブ

作家友達の風野潮さんと、心斎橋JANUSへカジヒデキのライブに行ってきた。
なにげに、若い頃、小沢健二とか、ピチカートヴァイブとか、渋谷系が好きだったのである。

私が出かける気配に気づいて、息子がまとわりついてくる。

「どこいくの?」
「潮さんと、お歌、聴きに行くんだよ」
「ととくんも、いきたい!」
「うーん、ととくんがもうちょっと大きくなって、じっと静か静かにできるお兄ちゃんになったら、いっしょに行こうね」

いや、ライブって、そんなに静かにじっと聴き入るものじゃないか。
ここ数年、音楽といえば、クラシックとかオペラだったので、ライブのノリがわからん。

そして、ダンナにも「気をつけてね」と見送られる。
うん、心配ないよ。あなたが行くようなメタルバンドのライブとは、たぶん、客層がちがうから。

そんなわけで、潮さんと心斎橋に行き、オーガニック&ベジタリアンカフェ「Atl」で、まずはお茶。
ここのベーグル、これまで食べたことないくらいハードで、みっちりして、美味しかった。

そして、ライブはスタンディングだったけれども、人の上を人が流れて行く(モッシュ&ダイブというらしい)とかもなく、ほどよい感じで、音楽に身をゆだねることができた。
新譜の『ビーチボーイのジャームッシュ』に続いて、『甘い恋人』で盛り上がる。目の前で汗だくになって歌っているのが、キャリアを積み、四十五歳になったポップ・アーティストというので、余計に、感じ入るものがあった。
ゲストで参加していた、北海道出身のひとたちがやっているというKONCOSの音楽も好きな感じだったし、ひととき、青春や恋愛の切なさなど思い出して、楽しい夜を過ごす。

ちなみに、潮さんはふだんはロック系のライブに行くことが多く、息子さんが大学生のときにその友人たちとGREEN DAYというパンクバンドのライブに行って、人波に揉まれ大変な目にあったそうな……。
その話を聞いて、大学生になった息子とライブに行くなんて、素敵だなあと思った。

息子が大きくなって、夜遊びできるような年頃になったとき、果たして、彼は私といっしょにライブに行きたいと思うのだろうか。
ライブでなくても、共通の趣味を楽しめるような、そんな親子関係を築きたいものである。

チェブラーシカとロシア・アニメーションの作家たち

滋賀県立近代美術館まで、親子三人で、チェブラーシカの展示を観に行ってきた。

実は息子、二歳にして、美術館を訪れるのは、六度目くらいなのである。
まだ保育園に行っていなかった頃、私が仕事をするあいだ、ダンナに息子を連れて出てもらうことが多かった。
ダンナは、おなかに抱っこひもに入った息子を連れていようとも、あまり気にせずに、面白そうな展示があると、美術館に入っていたらしい。
美術館なんてよくそんなところに赤ちゃん連れで行くなあと思っていたのだが、逆に、まだ歩くことも話すこともできない赤ちゃんだったからこそ、寝てしまえば静かなものなので、連れて行くことができたのだとも言える。

そういうわけで、歩くことも話すこともできるようになった息子は、美術館で大はしゃぎだった。

「ちぇぶちゃん! いた! かわいい!」
「あっちも! ちぇぶちゃん、いる!」
「ここ! こっち、もっと、みるの!」

こんな調子で、大きな声を出したり、走りまわったりと、もう、冷や汗ものであった……。

ただ、展示の内容的に、大人向けというわけではなく、子連れで来ているひともちらほらいたし、常設展の現代アートにも子供向けの解説がついていたりと、ちいさなお子さんもOKな雰囲気があったのが、救いだった。

展示の第一部は「原作となった児童書の挿絵原画から多彩なチェブラーシカの姿を誕生から追う」ということで、ロシアで出版された本がいくつか展示されていて、いろんな挿絵バージョンのチェブラーシカを見ることができたのがうれしかった。
真っ黒でタヌキみたいなチェブラーシカとか。
どう見ても太りすぎの二段腹をしたチェブラーシカとか。
……え? これ、ヨーダ? みたいなチェブラーシカとか。
おなじ物語でも、挿絵によって、ずいぶんと印象がちがうものだ。

原作者であるエドゥアルド・ウスペンスキー氏のインタビュー映像が流れていたのも、児童文学を書く身として、いい刺激になった。
そして、展示の第四部は「ロシア・アニメーションの作家たち」ということで、チェブラーシカだけでなく、さまざまなロシアのアニメーションの絵コンテが展示され、映像も流れていて、久々に自分でもコマ撮りアニメを作りたくなった。
むかーし、大学生の頃は、ひまがあったので、ビデオカメラで、一コマ撮っては、人形を動かし、一コマ撮っては、また人形を動かしと、コマ撮りアニメーションを作って、遊んでいたのでした。

ミュージアムショップで販売しているグッズは、思ったより少なかった。
買ったのは、まず、図録。
衝撃的に可愛くないヨーダみたいなチェブラーシカの描かれたクリアファイル。
電話ボックスでチェブとゲーナがお茶してるポストカード。
どことなく出っ歯なチェブラーシカのロシア製陶器の置物。

あと、二階のくつろぎ美術館というところでパンを販売しているらしく、私がお土産を選んでいるあいだに、ダンナと息子は買いに行ったのだが、売り切れていたそうで……。
しかし、息子が「ぱん、たべたい! ぱん!」と言ったところ、店のひとが「これ、予約分ですが、来られないみたいなので……」とひとつだけ、売ってくださったらしい。子供がいると、親切が本当に身にしみます……。
その米粉のシフォンケーキが、ふわふわで、めちゃおいしかったので、ああ、展示を見るまえに、パンをいろいろ買い込んででおけばよかった、と思う。
これから滋賀県立近代美術館に行かれる方は、早めにパンをゲットしておくことをおすすめします。

滋賀県立近代美術館はJR瀬田駅からバスで二百円の「文化ゾーン」に建っているのだが、同じ敷地内に茶室や素敵な図書館もあり、緑豊かな公園は広々としていて、ちょうど雨上がりできのこが生えていたり、竹林があったりで、とても雰囲気がよかった。

大阪からだとちょっとした小旅行という遠さだったが、さすが美術館の展示だけあって充実の内容で、ほくほくしながら帰路についた。

チェブラーシカ展

滋賀県立近代美術館で「チェブラーシカとロシア・アニメーションの作家たち」という企画展を開催しているらしく、めちゃくちゃ心惹かれている。

でも、二歳児連れで、大阪から滋賀までは遠い……。
そして、「2014年まで、全国の美術館を巡回します」という一文を見つけ、もしかしたら、近くの美術館に展示がまわってくる可能性もあるかと思うと、ますます迷う……。

追記。
主催者に問い合わせてみたところ、いまのところ大阪での開催は予定されていないとのこと。
近畿圏では滋賀ほどの充実度で展示するところはなさそうなので、行く方向で考えています。

花菖蒲まつり

池田市にある水月公園の花菖蒲まつりに行ってきた。

息子は花と噴水を興味深くながめたあと、ミニSLに乗り、満面の笑顔だった。
カメラを持って行くのを忘れたので、写真は撮れなかったが、あのうれしそうな顔はしっかりと記憶に焼き付けておこう。
一周して、戻ってきた息子に、私は声をかけた。

「よかったねえ。電車、乗れて」
「でんしゃ、ちがうで。しんかんせん!」

息子の指摘通り、たしかに一番前の車両は、新幹線を模していた。
イベントの看板には「ミニSL試乗」って書いてあったけれど。

それから、公園内に設置されたふれあい動物園に向かう。
トラックで運ばれてきた動物たちが、公園の一画に作られた柵のなかにいて、自由にさわることができるようになっている
その横では、ポニーの引き馬も行っていて、息子は「おうまさん、のりたい!」と目を輝かせたのだが、三歳以下は無理だと知り、しょんぼりしていた。

ふれあい動物園では、まず、入ったところで、イグアナがお出迎え。
おそるおそる、息子は手を伸ばして、背中をさわり「ちっくんした」とつぶやいていた。
イグアナの背びれが、とげとげしていて、驚いたらしい。

それから、うさぎ、ひよこ、モルモットなどをそっとさわって、あひるやターキーなどの鳥たちをながめたり、亀の甲羅をつついたりして、動物園を満喫である。
二歳児だと、大きな動物園に行かなくても、これくらいの規模で、十分、楽しめるようだ。

息子がうさぎをのぞきこんでいたところ、その横にいたおなじくらいの年であろう男の子に、お母さんらしきひとが「ほら、なでなでして」と声をかける。
すると、その男の子は、息子の頭をなでたのであった。

そして、息子が犬をさわりに行こうとしたときにも、息子のまえに犬をなでていたおじさんが、ついでに息子の頭もなでていた。息子、ふれあわれまくりである。

家に帰ってから、息子に訊く。

「今日、動物さんいっぱいで、楽しかったね。なにが好き?」
「かめさん!」
「そうか、かめさんが好きなんだ。ほかには、なに、いたっけ?」
「いろんな、いたで。ごぶりんとか」

ゴブリン?! 予想外の単語に、聞き返す。

「え? ゴブリンってなに? どんなだった?」
「こんなだった」

息子はうつぶせになり、胸をそらして、頭を持ちあげる。

もしかして、イグアナのことを言いたいのだろうか?
いや、大人には見えないゴブリンのすがたが、息子には見えていたのかもしれない……。

タイフェスティバル2012大阪

某日、大阪城公園で行われたタイフェスに、友人らと息子を連れて行ってきた。
タイ王国の美味しいものが集まり、会場にずらりとならんだ屋台を見た瞬間、テンションがあがりまくる。

実は、新婚旅行の行き先がバンコク・アユタヤだったというくらい、彼の地は大好きなのである。

タイ料理というと辛いモノが多いので子連れはどうかとも思ったのだが、そこは同行してくれたタイ博士(タイフェス参加は七回目)に、おすすめ料理をきいて、二歳児でも食べることができるものをチョイスしてもらった。

カオマンガイというタイ風蒸し鶏飯は、全然、辛くなかった。
息子的には、串にささった魚肉団子がヒットしたようで、ばくばく食べていた。
あと、パッタイという焼きそばも、ほどよい甘辛さで、気に入ったようだ。

まあ、あんまり辛くなさそうな肉をあげたら、ものっすごい涙目になって、むせていて、ラー油みたいな味だったりしたので、ごめん、息子よ……ということもあったのだが。

タイ料理は、屋外で食べるのが似合う。
ムエタイをながめながら、真っ昼間からビールがうまい。

それから、デザート類も、いっぱいあって楽しかった!

カノムクロックという、ココナッツミルクと米粉の甘い生地を焼いたお菓子があるのだが、どう見ても、たこ焼きである。
味はほんのり甘いのに、なぜか、中身がねぎとか胡麻というのも、微妙な味わいで、クセになる。デザートとして考えた場合、この生地の中身には、甘い小豆とかレーズンが合うと思うのだが……。

緑色のスライムみたいなぷるんぷるんした謎なデザートとか、ココナッツアイスのトッピングがコーンとか、独特のセンスがたまらん。

そんな満足満腹のタイフェスであったのだが、息子にとって、もっとも印象深かったのは「鬼がいた」ことだったようだ。

会場のなかを民族衣装を身につけ、仮面をかぶったひとが、うろついていたのである。

それを目撃した瞬間、息子は固まっていた……。

「おにだ……。おにが、いる……」

もちろん、私はうなずいた。

「うん。鬼だね。鬼がいるよ」

そして、その仮面のひとにお客さんが近づいていくのを、遠目にながめながら、こんなことを言う。

「あっ、子供が……! 子供が鬼に、近づいたよ。やばい。食べられちゃう。逃げて~。……ああ、助かった。よかったねえ」

実際には、おそらく、仮面のひととお客さんのあいだでは「写真撮っていいですか?」「どうぞ~」「ありがとうございました~」というやりとりが行われていたのだと思われるが。

そんな感じで、タイフェスで、鬼(らしきもの)を見たという経験は、息子の心に強く刻み込まれたらしい。

家に帰ってからも、ふとした瞬間、なんの脈絡もなく、唐突に、言う。

「まえ、おそとで、ごはんたべたとき、おに、いたねえ」

特におびえているというわけでもなく、ただ、事実を確認しておくというように、つぶやくのだ。

息子の世界観では、鬼が実在している。

子供は七歳くらいまで、ファンタジーの世界の住人らしい。
この豊かな世界をまだしばらくは守ってあげたいなあと思い、日々、ほらを吹く母である。